コラム
COLUMN

不妊予防のすすめ

私は長い間不妊治療に関わり、近年飛躍的進歩を遂げた不妊治療において可能になった事、反対に今の技術を持ってしても不可能な事、不妊治療の恩恵と限界の両面を見てきました。また、不妊患者さんのおなかの中を腹腔鏡を通して数多く見る機会にも恵まれました。そして不妊カップルの精神的、肉体的、経済的負担がどれだけ大きいかも知っています。こうした経験から私は、不妊は病気というより結果であり、そうなる前に予防できる事が少なからずあると考える様になりました。

例えば、最近不妊の原因として最もやっかいとされる子宮内膜症の早期発見、治療の選択、治療後の再発防止等管理はとても大切です。また若者に急増しているクラミジア感染症は卵管を詰まらせ、卵管性不妊になる最大の原因である事をご存知でしょうか?もうひとつ、高率に排卵障害をもたらす多のう胞性卵巣という病態は、メタボリック症候群の一環と認識されつつあり、不妊だけでなく、もっと先を見据えた対策が必要と思われます。そして最終的に一番の要は卵巣機能、質の良い卵子ができるかどうかです。その他、精神面、生活面など色々な因子が複雑に絡み合っているのです。

特に気になる症状もないしまだ妊娠は希望していないけれど、漠然と妊娠できる体かどうか心配、という独身女性をよく見かける様になりました。試すわけにもいかない状況の中で、それぞれに不安に感じるのは当然だと思います。この様な方は一般病院では充分対応してもらえませんし、人間ドックでは全く不十分、そうかといって不妊専門病院にはまだ行けません。現状を把握しておけば将来妊娠を希望した時に時間的LOSSを防ぐ事もできる可能性もありますので、こんなご心配にも丁寧にお答えしたいと思います。

まずは不妊予防健診をお受け下さい。私がこれまでの経験の中から、必要最低限でありながら充分に不妊要素を拾い上げる項目を選びました。もし、健診で異常が見つかっても、不妊にならない様に責任を持って、治療・管理致しますし、もっと詳しく知りたいのなら、不妊専門病院と同等の検査も可能です。管理中状況が変わり妊娠をご希望されれば、速やかに妊娠に結びつくための方針に切り替え、検査・指導を加えます。この時を私はいつも待っています。

このクリニックに通って頂く事で、妊娠・出産はまだ先の事と考えている若い女性が将来不妊で苦しむ事がない様に、今必要なメンテナンスを実行しながら同時に様々な知識も得て欲しいと願い、そのお手伝いをする事で微力ながら不妊治療の側面を支えていけたら幸いです。